雑木林の再生について
西原自然公園での取組み
平成28年1月20日 タウン通信 記事より
雑木林2次更新にあたって
木と生きた郷土史、感じてほしい
市民グループ「西原自然公園を育成する会」と西東京市の協働によって、雑木林の更新がはかられている同市の西原自然公園。国土交通大臣賞(「みどりの愛護」功労者)が同会に贈られるなど全国からも注目されるこの試みが丸15年を過ぎ、来月には、更新したエリア(約10㌃・60本)を再更新するという第2ステージに入っていく。活動の意義や成果について、同代表の池田干城さんに話を聞いた。
―まず、取り組みの概要を教えてください。
「1979年開園の西原自然公園(2㌶)を、本来の武蔵野の雑木林の姿に戻そうと活動しています。毎年10㌃ずつ木を植え替え、16年目。木はクヌギ・コナラを植えて成長に合わせて間伐しています。これにより、武蔵野らしい明るい雑木林になりました。今では、草花約40種類、木の花約20種類が季節ごとに咲き、一周600mの土の遊歩道からかつてのこの地の光景が眺められる、魅力的な公園になっています。」
-武蔵野の雑木林とは?
「多くの人の見慣れた雑木林はうっそうとしたものかもしれませんがそれは、実は放置された結果です。江戸時代のこの地の雑木林は人々の生活に不可欠なもので、畑と同じように人の手で作られ、管理されていました。主木となるクヌギやコナラは、燃料として最適なだけでなく、しいたけのホダ木になりますし、落ち葉は肥料にもなります。また、林に育つ草は飼料になるし、ドクダミやカンゾウ、シオデなど食用にも利用したでしょう。枯れれば焚きつけにうってつけです。
明治7年の田無の地租改正図を見ると、青梅街道を中心に、南北ともに、宅地・用水・林・畑の順番で整地されているのが一目で分かります。木々は15年から20年ごとに伐採され、常に若返りがはかられていました。人の手で管理された明るい林こそ、武蔵野の雑木林なんです」
-とはいえ、現代の生活上では、木や葉を必要としません。それでも活動が必要なのでしょうか?
「昨年6月、風もない晴天の日中に、突然コナラが折れたことがありました。近くで体操していた人が 『命拾いした』と帰ってきたほどの衝撃だったそうです。
折れた木は、推定樹齢80年ほど。茂り出した葉の重みに耐え切れなかったのです。人間と同じで木も年を重ねて弱るのです。
もともとこの雑木林は、江戸時代からずっと管理されてきました。ですから現代でも本来は人の手が必要です。
実際、私たちの活動以降、何十年と咲くことのなかった草花がたくさん姿を見せてくれるようになりました。これまでどこに潜んでいたのだろうと感動します。たとえばアマナという、今や『多摩地区ではもう見られない』と希少植物のようになっている花があるのですが、冬に落ち葉を掃いでやったら、一斉に咲くようになりました」
-管理をするようになった経緯は?
「15年前、環境保全の活動をしていた市民たちが、林の若返りを目指して市にかけあったのが始まりです。私は、活動が始まった直後からかかわってます。
最初は、かつて行われていた『萌芽更新』を試みました。木を切るとその切り株から新しい株が出てくるのです。それを育てていくやり方で、根本から2本立や3本立になっている木はたいてい萌芽更新の木です。
ただ、残念ながらこの公園では思ったほどには萌芽更新できませんでした。放ってきたせいで、樹齢60年以上の木ばかりだったからです。そのときにコナラを38本切っていますが、萌芽更新できて今残っているのは12本ほどです。
それで、2回目からは方法を変えて、新たに苗から植えるようにしました。それが11年前。以降は、毎年80本ずつ植えています。10年以上たち、武蔵野らしい光景が広がるようになりました」
-15年続けて感じることは。
「ここに来るたびに、自然の変化に驚きます。会員は30人ほどいますが、みんな同じだろうと思います。結局は、自然の中に身を置くのが好きなんです。
それは会員だけではありません。遊歩道を散歩する人は常にいますし、花が咲く季節には、自発的に世話する人が現れます。
ここは20年くらい前は、ちかんが出る危ない場所でした。子どもは入園が注意されたくらいです。それが今では、近くの保育園児が毎日来るし、住宅地の中の憩いの場所として地域で愛されています。この魅力を、もっと多くの人に知ってほしいと思って呼びかけをしています」
-2月の伐採イベントのことですね?
「最初に更新したエリアの木を、ノコギリで30本、チェンソーで30本切る予定です。作業してくれる人を募集しているのですが、見学だけも大歓迎です。ぜひ、かつてのこの地の人々の営みを体感し、『昔はこうやって林とともに生きていたんだ』と、感じてもらいたいと思っています」
間伐
込みすぎた森林などで、主な木の生育を助けたり、採光をよくしたりするために、適当な間隔を保つために木を伐採することです。また、利用できる大きさに達した立木を徐々に収穫するために行う間引き作業で、透かし伐(ぎ)りとも言い、間伐により生じた木材は間伐材として薪(まき)・杭(くい)にするほか、製紙用パルプや割り箸などにも加工されます。
除伐も間引き作業の一つですが、目的の木以外の樹木や、形質の悪い樹木も含めて間引きを行うことをいいます。
萌芽更新
萌芽更新とは「人が手を加えて森林を管理する方法」の一つです。
クヌギやコナラなどの広葉樹は、幹を切ると切り株からたくさんの芽が伸びだしてきます。15~20年経った樹木を伐採し、萌芽を育てて雑木林の若返りを図ります。かつては薪や炭に利用される細い材をたくさん生産するのに適しているため、里山管理の手法として多く行われていました。
林全体が若返り、太陽光が届くようになるため、落下していた種子による天然更新も進みます。また、日影により休眠していた草花や、従来そこに生息していた昆虫や小動物が帰ってきます。
また、クヌギやコナラなどの種子(ドングリ)を苗木として育て、植樹をして森林全体のバランスを保ちます。